盆も明けて直ぐ、知り合いの工事屋より「助けてくれ!床がトランポリン!?になった」の電話が入る。暑い中、道具を積んで出かけた先は、東京都と埼玉県の境、荒川近くのファミリーマンション新築現場。
中に入って見た物は……置き敷工法に失敗したフローリングが太鼓状態になって、真ん中が見事に浮いている。予想通りとは言え、こりゃ余りにも酷い。本当にトランポリンそのものだ。
知り合いの工事屋は、人手が足りないからと急遽呼ばれ、助っ人を出したが、そこは実に綺麗に収まっている。事故ったのは、内装元請が自家手(=自前の職人)で施工した部屋。
置き敷工法とは、糊も釘も使わずに、巨大な一枚の板をボン!と床面に置く工法である事は、ここでも何度も述べた通り。その際、フローリング自体の伸縮を考えて、壁際に僅かな隙間(クリアランス)を設けてやるのがルール。そして、このクリアランスを幅木等のアクセサリーを使って、上手に隠すのがコツである。
このクリアランス確保作業を怠ると発生する代表的な事故が、今回のトランポリン現象なのである。
昔は、前述アクセサリー自体が、なかなか手当て出来なかったが、今は国産でも輸入品でもかなり普及し、全然手に入らないと言う事は、まず無くなった。それなのに……このざまである。
実際に施工した若者は、事前に施工マニュアルらしき物を見たという。くしゃくしゃになって現場に落ちていたそれらしき物を見て、改めて感じる事…肝心な事が全然書いてありませんよぉ~。こんな直訳じゃ、輸入元にメーカー機能、まるで無し。きちんと日本の職人に内容吟味と添削をさせたのか???前提が違う国のマニュアルをそのまま使えるはずがないのは、火を見るより明らか。全く、この経験の浅い若者ばかりを攻めちゃ、可愛そうだ。
ともかくここが腕の見せ所、貼り直しをせずに、どうやってこの持ち上がりを引渡し日までに収めるか?、それが私が呼ばれた理由である。
長年の(!?)経験から、車に戻って、七つ道具の一つを持ち込み、フローリングをXXXXXXする。皆が固唾を呑んで見守る中….下がらない。盛り上がりは一向に下がらない。皆んな、キョトンとし、やがて失意の溜息が漏れる。「やっぱり貼り直ししなきゃ~駄目かぁ…….」と。
「明日もう一度確認して、まだ問題あれば電話してくれ」そういい残し、颯爽と現場を去った。我ながら、格好の良い帰り方だ。
翌日、昼前にけたたましく℡が鳴る「落ちた!盛り上がりが落ちた。直った!直った!!貼り直しをせずに済んだ」
当然です。だてに何十年もやっていない、加えて、こう見えてもフローリングの勉学は日常怠っていない。
これを教訓として、あの場にいた若い連中は、今後、少なくとも置き敷工法では、二度と失敗しない事を祈るばかり。
一方で、置き敷工法に限っては、手離れの良い材料売りが、大事故を引き起こし、それは結果、商売を台無しにして、商品の生命自体を殺してしまう事を、メーカーや輸入元がいつになったら理解するのか?とても残念に思う。