昔、テレビでドイツの自動車教習所と日本のそれとの違いを放映した事がある。最も違うのは、事故が起こった時の対処方法を教えるか教えないかだと言うのが、その番組の結論だった。
如何に未然に事故を防ぐか”だけ”を教えるのが日本、それ半分で残り半分は、事故が起こった時の対処方法を教えるのがドイツだと。
話変わって、超耐久200年住宅と言うフレーズが、最近急にあちこちのハウスメーカーで声高に叫ばれ始めた。資源節約及び環境保護の折、これは至極ご最もな意見だと思う。全面賛成。
では住宅の内外装は、どの様に改善したらいいのか?
基礎や構造材など、普段”人の手が触れない箇所”は出来る限り強固に、となろう。では内装においてフローリングはどうか?常日頃、接するフローリングの表面が、出来る限り傷まない様にする、これは当たり前。だからフローリング表面の耐傷性や耐光性を上げる研究は、メーカーを問わず、常に行われ、製品は確実に改良されて来た。
では、そうは言っても内装材が傷んでしまった時の対処方法は、果たして建材メーカーや住宅メーカーで研究され尽くして来たのだろうか?これは非常に疑問だ。
補修屋と言う業態もあるが、これも集合住宅で流行り、業者が乱立して来たのはごく最近。それも基本は、元の傷を埋めたり塗ったりして、要は”隠す”のである。つまり傷んだ物を新品に交換はしない。
何故か?痛んだ箇所を交換するには、隠すに比して、猛烈な手間・暇・金が掛かるから。で、決められた予算の中で、正当な利益を得るには、補修屋だってとても交換なんかやってられないから。
つまり、補修屋の手抜きや技術の不足では全く無い。
裏返せば、部分的に容易に交換出来る事を全く”想定していない”物作りが、どの建材メーカーでも今までは当たり前だったのだ。
一般的なフローリングの貼り方を知っていますか?
糊と釘を使って下地にがっちり固定するのです。これを無理やり剥がそうとすれば、どうなりますか?力任せに剥がすから、時間は掛かる、加えて下地も壁紙など周辺部材を酷く傷める事になる。僅か1枚を貼り替えるだけで、周辺部に大変なダメージを与え、労力と金を費やす事になるのだ。
200年も持つ住宅だったとして、何世代にも渡って、全然傷まない内装など土台無理。ではどうしたらいいか?答えはとても簡単、
隠すより安価なコストで、
その都度、そこだけ簡単に新品に交換出来て、
そして作業の際は周辺部材を傷めない様な工法で最初から取り付ければいい
のです。
誰だって、直すより新品の方がいい。でも地球に優しいのは、断然直す方である…..この考えは実はフローリングでは、正しく無い。
傷付いたフローリングをわざわざ直すより、ピカピカの新品に交換する。それも新品への交換の方が、直すよりも手間も暇も金も掛からない。そんな地球に優しい理想的な工法が、少なくともフローリングではちゃんと存在するのです。日本に限っては、そんな工法がまだ普及していないだけなのです。
傷めない様にする研究と同時に、傷んだ時にはどうするか?の研究。こんな柔軟でシンプルな発想が、200年住宅の内装に改めて必要だと思うのは我々職人だけだろうか??