お手入れシリーズ② 専門業者の行うフローリングのコーティング処理は全て効果的か?

職人日記

建材メーカーや工務店とは全く別の、業者が行う木質フローリングのコーティング業が花盛りだが、果たして全てに効果的だろうか?

⇒これも素直にイエスとは言えません。

先日、国立某一流工科系大学の正門近く学生用新築ワンルームマンションで、このコーティング作業に拠る悲劇に遭遇した。

セラミック塗装したカラーフロア(流行の艶消し仕様)にて、竣工検査も無事終了した後、デベロッパーが、このコーティング作業を自社の負担で業者に施させた。

学生専門と言う事で、入れ替わりの激しい事を見越し、デベロッパーは傷対策とメンテナンス不要を目的に、高い金を出して、コーティング作業を業者に依頼した事は、容易に想像出来る。

コーティング作業終了後、悲劇は意外な形で露呈した。

フローリング自体の傷、凹み、施工時の釘に拠る端部の一部膨れ、艶ムラ、シリコン付着に拠りコーティング剤が乗らない箇所の曇り等々、僅か10畳の部屋、それも一度は竣工検査で合格した部屋で、20箇所の不具合が発生し、大問題となった。

コーティング処理のセールスポイントは、いつまでも艶を保ち、メンテ不要であるが、一方で値段はそれなり、この謳い文句が、全て裏目に出てしまった。

元々のフローリングは、セラミック塗装に拠る艶消し仕様が売り。セラミック塗装とは、耐傷性能を上げる為に、セラミックの微少な粒子を表面に配合してある。艶出しを謳うコーティング剤が、その艶消し仕様とセラミック耐傷性能を台無しにしたのである。加えて、売り文句の表面抗菌作用まで消してしまった。

艶を出してしまった事で、これまで目立たなかった微少な傷や凹みが太陽光でくっきりと浮かび上がったのが20箇所もの不具合の最たる理由である。

デベロッパーからすれば、どんな処理をしようとフローリングの不具合は不具合が言い分。結果、メーカーに全面貼り替えを要求。全30戸分の貼り替えが、全費用メーカー負担で実行されたのだから、たまらない。

「寝た子を起こす」とは、まさにこの事、竣工検査で合格が出たにも拘わらず、一転して全面貼り替えを強いられたこのフローリングメーカーは、泣くに泣けないだろう。ましてや、30戸のほとんどが「学生と契約後」の貼り替え作業だから、入居遅延の弁済も馬鹿にならない。

コーティング業者の使用する樹脂ワックス(ウレタンやアクリル主成分)は一度塗ると、剥離剤で処理出来ず、つまり、もう除去出来ない。

処理しようとするフローリングがどんな塗装か?施主も業者もきっちり見分けられないと、悲劇は、必ず再発する。